お問い合わせ menu お問い合わせ

Out-Sourcing!Technology OSTech Robotics アウトソーシングテクノロジー
ロボティクス課サービスサイト

EVENT INFORMATION:お知らせ

2019/03/25

実証研究中間報告~英語授業でのNAO活用について~

昨年から福岡県大牟田市立明治小学校でスタートした、「人型ロボットNAOを活用した外国語教育の実証研究」


2019年2月22日、ついにその成果の報告会の日がやってきました。




当日、取材に来て頂いた讀賣新聞社でも全国版として大きく取り上げて頂きました。



明治小学校の英語に対する取組み

実は明治小学校は、2011年度から小学校5,6年生で外国語活動が必修化されるよりもっと前から、
外国語活動の研究に取り組み、他校への紹介を行うなど、積極な取り組みを行ってきました。
(2020年度からは3,4年生から必修化、5,6年生は教科化となります)

・2000年度 ウェブコンテンツを活用した英会話活動がスタート
・2006年度 大牟田市教育委員会の研究指定を受ける
・2006年度 国立教育政策研究所の「小学校における英語教育の在り方に関する調査研究」協力校に選定
・2007年度 文部科学省の「小学校における英語活動等国際理解活動推進事業」の拠点校に選定
・2009年度 同省「外国語活動における教材の効果的な活用及び評価の在り方等に関する実践研究事業」の実践協力校
・2010年度 福岡県の「重点課題研究指定・委嘱事業」の研究校
  ・
  ・
  ・

そして、2018年度の研究主題は以下となり、その中でロボットの活用も含め、
以下の研究主題に取り組んでおられます。

————————————————————
進んでコミュニケーションを図る子どもを育てる外国語活動(英語活動)
~目的を明確にした単元構成と相手意識を高める指導方法の工夫を通して~
※詳しくはWeb
————————————————————



当日、14:30からの開始に向け、事前準備。

NAOもスタンバイOKです。



さあ、まずは公開授業が始まりました。

(Let’s Try! 1 Unit8 What’s this? これなあに?)



ホワイトボードに、桃、牛、ペンギン、キャンディ、おにぎりなどの絵が貼られています。

NAOが英語でヒントを出し、児童が答えます。



NAO:「Hint 1, it’s black and white.」


児童:「Hint please!」
NAO:「Hint 2, it’s delicious.」


児童:「Hint please!」
NAO:「Hint 3, it’s triangle.」


児童:「Rice ball!!」

教室で参観者が見学する中で授業を行ってきた児童も、
こんなに大勢の大人の前だとさすがに緊張気味でしたが、、、

授業が進むにつれ緊張はほぐれ、授業終わりには、
1年間NAOと慣れ親しんだ児童がNAOの周りに集まります。




研究主任の先生方による実践発表

休憩を挟んで、実践発表。

約1年間、研究に取り組んでこられた、研究主任の大野先生と、
副研究主任の杉本先生からの発表です。

————————————————————
●担任から見た良さ
・操作がタブレットを使って簡単に操作可能
・子どもの反応を確かめながら進められる
・内容の強調や焦点化を図ることができる
・テンポよく授業を進める事ができる
・持ち運びしやすい

●NAOの機能
・ワンタッチで操作ができる
・音声の提示(お手本、問題提示、やり取りの確認)
・動きがついている
・内容のカスタマイズが可能

●子供から見た良さ
・ロボットと学習を進めるので楽しんで活動できる
・デモンストレーションを見て、全体の流れを確認できる。
・音声を何度も聞くことができる
・やり取りをしながら子供が主体的に活動できる
————————————————————

ただし、ロボットとタブレットとWi-Fiを起動させる必要があることや、
Wi-Fi通信のため反応が遅い事があり、NAOとの自然な掛け合いを見せるためには慣れが必要、
また、NAOと直接会話をさせてあげたいという課題、要望があり、今後の改善に期待です。


そして、大阪樟蔭女子大学教授 菅 正隆先生の講演

小学校への英語教育普及の第一人者でもあり、元文科省で教科調査官を務めてこられ、
今回の研究の中心として指揮をとられた菅先生の講演です。

————————————————————
これからの人型ロボットとの協同授業(外国語教育)
~実証研究から見えてくるもの~
————————————————————


今年度の研究は小学校3年生、2クラス合計38名を対象に行いました。
中間報告のポイントは大きく2点です。

●1.子どもの情意面

2018年の9月と12月に分けて2回実施した児童へのアンケートをもとに、
英語及び英語の授業に対する子ども達の情意面の変化を考察。

①「英語の授業は好きですか?」
「好き」と回答している児童は第1回目で97.4%、第2回目で88.2% となっており、英語の授業にしては高い数値。
学習時間が増えれば増えるほど、興昧関心が薄れる事は他の調査でもよく見られる。


②「NAOくんとの授業は楽しいですか?」③「もっとナオくんと英語を勉強したいと思いますか?」
前述の興味関心が薄れていく傾向に対し、②、③の質問は双方2回のアンケートともに
「楽しい」と回答している児童は100%であった。



人型口ボットに対して、長く興味関心が持続し、意欲的に関わりたいという想いは、
以下のような児童の自由記述欄にも表れており、クラスの中の1人の友達として受け入れていることが、
言葉の端々にみて取れる。

「一緒に勉強したい」「一緒に遊びたい」「お店屋さんの授業でお店屋さんになってほしい」



また、児童へのインタビューではこんな声もあった。

「英語なんておもしろくなかったけど、NAOくんが来てから、
 何を言っているのかをちゃんと聞きたくて、おかげで英語を少し覚えてきた。
 NAOくんは友達みたいな先生です」


●2.英語運用能力の効果

NAOが発する英語は、児童からしてもネイティブスピーカーや、
日本人英語教員と比較して遜色がないかを、インタビューテストを実施して検証。

方法としては、3つの教室を用意し、
それぞれロボット、ネイティブスピーカー(英語を母語とする外国人)、日本人英語教員が待機している。
何も知らない子供が順番に教室に入り、英語で質問され、どう返すのか、という内容。
ヒアリング力とスピーキング力が求められる。



「What day is it today?」「Do you like Milk?」
回答が絞られている事もあり、ロボット、ネイティブスピーカー、日本人教員の間にほとんど差異は見られなかった。



「What fruits do you like?」
英語を正しく聞きとり、かつ数ある選択肢から自分の気持ちを伝える、という少しハードルの高い内容。
日本人英語教員による質問が、2回とも高い数値を示していた。
1度で聞き取れなかった際に、同じ日本人として聞きやすい発音、スピード、強調を、
無意識ながら調整していた事が1つの要因と考えられる。



「Repeat after me・・・」
ロボットに対してが一番正答率が高く、かつ黙りこんでしまうような無回答の割合が低かった。
ロボットに対しては恥ずかしさや間違う事の恐れがなく、積極的に回答しようとする姿勢がみられた。



大牟田市教育委員会、安田昌則教育長のお言葉

締めくくりは、大牟田市教育委員会、安田教育長からのお言葉です。

実は大牟田市では、2000年度から市内全校でウェブコンテンツを活用した英会話活動がスタートしていますが、
教材制作をリーダーとして担当したのが、教育委員会、指導主事時代の安田教育長なのです。

その後、英語活動研究指定校である明治小学校の校長に就任されました。

長年英語教育に携わってきた安田教育長は、早くからICT活用に乗り出し、常に最先端の動向に注目されております。

大牟田市の小学校担当のALTは1人で、授業に参加できるのは1学期に1、2回。
財政面からくる地域間の教育格差を課題と感じている自治体の教育長の1人なのです。



「ALTは費用がかかり、財政的に増員は難しい。発音や会話などはロボットで補えないか、可能性を探りたい」



本年度の研究では、先生の運用面が課題としてあげられましたが、
引き続き、ロボットの可能性に対しての研究には意欲的でありました。



まとめ

配布したアンケートは自由記入形式で、大まかな感想としては以下です。

————————————————————
子どもたちの興味・関心が積極的な姿勢、学習意欲につながる・・・47.4%
興味だけでなく、実際に英語力を育む効果が出そう・・・・・・・・26.3%
地域間の教育格差を埋める助けになりそう・・・・・・・・・・・・10.5%
————————————————————
※残り15.8%は、プログラミング教育の可能性を大いに感じた、ロボットは扱うのが難しそう、
 笑顔で楽しそうに外国語活動に参加する姿がとてもよかった、など。



子どもたちの情意面については、NAOならではの良さが生きており、
新学習指導要領にも記載のあるような、
「主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。」
についてのロボットでの実現は兆しが見えてきました。



反面、クリアしなければならない課題、要望が明確になってきました。

————————————————————
■課題
起動に時間がかかる、反応が遅い事がある、NAOとの掛け合いには練習が必要

■要望
NAOと直接会話が成り立つようにしたい、他の授業でも使いたい
————————————————————


実証研究を行う中、想定していた良い結果が導き出せたこと、課題が明確になってきた事は大きな一歩です。
この課題に対しては一つずつクリアにしていく必要があります。

例えば、今回使用したNAOが5年前に発売された前のバージョンのため、2018年10月に発売されたばかりのNAOであれば、起動は格段に速くなり、レスポンスも向上しております。
また、Bluetoothが使えるため、事前準備の手間やWi-Fi通信による遅延解消にも繋がります。

また、NAOとの直接会話においては、授業中の関係のない言葉を拾ってしまったり、ざわざわした授業環境の中で人の声が正確に聞き取れるのか、という懸念があるため、授業中の音声認識はあえてオフにしています。

ですが、ノイズキャンセリングや高精度な音素識別など、音声認識の技術はどんどん進んでいます。

そうした最先端の技術を取り入れる事で、課題や要望を一つ一つクリアしていきつつ、
英語だけではないプログラミングや他の教科での利用用途の検討を行い、教育格差解消に少しでも貢献できるよう、引き続き対応を続けていきたいと思います。